最近好調なエニグモの成功ポイント

2017.04.06

最近好調なエニグモの成功ポイント

知人の靴(ファッション)を海外の人に購買代行してもらったというエピソードが元になりつつも、最初は敢えてセグメントを絞らず幅広く検証を行い徐々にファッションに収束させていく様には美しさすら覚えます。上場後好調なベンチャー企業株式会社エニグモについて分析します。

先日の2017年1期決算が17.6億円と好調な株式会社エニグモの分析を第一弾記事としてリリースします。

株式会社エニグモ:事業概要

世界中のマイナー商品を日本でも買えるようにするECサイト「BUYMA」の運営が収益の柱となっております。また、他の事業としては2015年に株式会社アクティブソナーと業務提携を行い始めた中古品買い取り・委託販売サービス「All-in」。女性向けキュレーションサイト「4meee!」を中心としたメディア事業となっています。

利益および売上内訳としてもソーシャルコマース事業こと「BUYMA」運営が99%以上を占めており、現在はBUYMAの会社として見てよいかと思います。

ちなみにリセール事業は取扱高のみがIR分析に掲載されており4半期取扱高は49百万円。4meee!を中心としたメディア事業は通期黒字を達成し、売上287百万円、営業利益は38百万円となっております。

会社沿革

さて、一番味わい深い部分です。上場した企業IRを1期だけ見てもドラマが感じられず味わいがありませんが、沿革と株主の推移はドラマが詰まっており実に味わい深い。時系列順で追っていきます。

上場時の有価証券報告書を見ていきます。創業は平成16年2月、ショッピング・コミュニティサイト運用(現在BUYMAの原型か)を目的とし株式会社エニグモが設立されました。創業者は現在もCEOを務める須田将啓氏、既に共同代表を辞任している田中禎人氏が共同で立ち上げています。

須田氏は慶応卒、博報堂新卒入社、約14年間の勤務を経て起業。田中氏は青学卒、新卒でオンワード樫山入社後1年でPR会社に転職、1-2年の勤務の後、01年にはカリフォルニア大学アーバイン校でMBAを取得しています。MBA取得後博報堂へ。2-3年勤務した後、ここで同じく博報堂勤務であった須田氏と共に共同代表としてエニグモを設立します。ふたりとも74年生まれなので同じ年齢ですね。お互い30歳までには起業しようと思っていたところで気があったそうです。

創業時には、現在株式会社RENGA代表である藤井真人氏もCOOとして参画しています。藤井氏も博報堂なので経営陣は博報堂だらけですね。

 

BUYMAのアイディアの発案自体は田中氏からのようですね。2002年のクリスマスに田中氏の知人が海外で買った靴を再び購入しようとしたが日本では手に入らず、現地の知人に代わりに買ってもらったというエピソードからこのアイディアはスタートします。

06年の記事にもBUYMAのアイディアが掲載されており、現在までも海外製品の購買代行という軸はブレずにサービスとして成長しております。ベンチャーは創業当初の目論見は外れながらもピボットを繰り返し成長していくというのがよくある話ですが、ブレずに上場後も成長しているのは素晴らしいと思います。

しかしながらコンセプトは一貫しているとはいえ、現在のようにファッションECサイトの形になるまでには時間を要しました。

まずトラブル第一弾は外注の夜逃げ。DeNAでも似たような外注トラブルがありましたね。リソースや仮説検証が十分でない初期としては外注もオプションの1つではもちろんありますが、外注先選びを間違えるとエラい苦労します。システム業界にコネがない人が見積もりサイトなどを使って外注すると必ずと言っていいほどトラブルになるので注意が必要です。

次のトラブル―というかビジネス上の課題は取引数が1日数件しかなかったことです。toCのマッチングサービスで薄利の中これでは1日の収益が数百円ということもあるでしょう(サイトオープン後の取扱高は月50万円、売上にすると4万円という時期もあったそう)。

現在と主な差分は「何を売る場」であるかが定まっていないところでした。現在では海外ファッションブランドが主となっておりますが、当時は売るものを特に定めていなかったため、アサリ(魚介類)や家なんかも売られていたそうです笑。

これが初期に売れ始めたのがアバクロであり、ここから「海外ファッション」という活路を見つけたようです。このようにプラットフォームをまず用意しつつもセグメントを定めずに実験を続け、売れるセグメントの匂い敏感に察知して注力したのは嗅覚の鋭さの証明ですね。

このようなやり方では、小さな可能性の兆しを見落としているといつまでも活路を見いだせず数年経過してもアサリが一日数件取引されるだけのサイトとして閉鎖への道を辿ります。

株主

BUYMAは一気にブレークしたわけではなく地道な改善で成長を続けました。BUYMAが損益分岐点を超え、黒字化を達成するまでの間に会社を存続させる必要があるため、資金調達および短期的なキャッシュを生み出す事業が必要となります。

資金調達の面では初期の資金は自己資金や知人、友人からの出資で6,000万円。サイトオープンより三ヶ月後に全く売上が順調でないのにも関わらずジャフコから1.4億円の調達を成功させております。当時のシード・アーリーステージで目立った成果もなかったのにも関わらず、資金調達が可能であったのは「日本企業を辞めて起業する人が少なく、その先駆けとなって欲しい」というジャフコ側の想いがあったからだそうです。続いて同じ時期にネットエイジ、オリックスキャピタルからも追加で資本が入りました。1ヶ月遅れでニューフロンティアパートナーズ(アイフル傘下のベンチャーキャピタル)も参画します。ジャフコのリード投資が果たした役割が大きかったのでしょうね。

その後、大株主としてソネット(ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)が参画します。投資額は6億円、黒字化もしておらずサービスも早い段階にあった当時としてはかなりの額です。今回はソネットからの出資になりますが、ソニーはDeNA、SMSにも早い段階で投資しており大きなリターンを得ている実はかなり成功しているベンチャーキャピタルです。2014年と、かなり時間が経過してからになりますが、ソニーは後にソネットが保有していたエニグモ株式を買い付け、24.4%と現在筆頭株主となっております。

短期的なキャッシュを稼ぐ目的で消費者参画系CM制作ネットワーク「filmo」、ブログプロモーション事業である「プレスブログ」も時期を近くして開始。こちらは地道な広告事業として創業第8期までのキャッシュフローを支えます。後にBUYMAが黒字化した第9期においてBUYMAへリソースを振り向けるためサービスをクローズしております。

エニグモ成功のポイント

1.資金調達

2000年台前半では資金調達環境は現在と異なり、数千万の調達もかなりの困難を伴うものであったと聞いております。しかしエニグモは事業のKPIを厳しく見れば投資判断が難しくなりそうなところ、ジャフコから1.4億円、ソネットから6億円の調達を可能にしております。ソースが限られているのであくまで推測ですが、2つの大きな要因があったのかと思われます。

1-1. 事業性

株価が付きやすい事業は堅実なキャッシュを生み出すものよりも新規性が高いものになります。今となっては陳腐なECも当時は新たな市場であり、さらに海外も関係するとなれば当時の投資家へは新規中の新規に賭けてみようという気になったのではないでしょうか。

1-2.チーム

ジャフコについては明記されておりますが、チームもまた大きな要因でしょう。特に事業の初期ステージでは投資判断のためのKPIに乏しいため、チームが投資判断に占める割合が大きくなります。

2.要所を押さえた事業展開

知人の靴(ファッション)を海外の人に購買代行してもらったというエピソードが元になりつつも、最初は敢えてセグメントを絞らず幅広く検証を行い徐々にファッションに収束させていく様には美しさすら覚えます。このようにサービス初期、細かい部分においては自分の考えを疑いつつも大きな流れ(スモールBtoCの加速)を信じ地道な改善を続けていくといった展開こそベンチャーにあるべきと感じました。

また、エクイティファイナンス一本では、追加調達ができなくなったタイミングが会社がなくなるタイミングになってしまうので、短期的な収益が見込めるブログを用いた広告事業(この当時はペイドブログなんて言葉もありましたね)を育てたという判断および実行能力も素晴らしいと感じております。

今でこそある言葉ですが、越境ECという流れの魁となったエニグモの飛躍を期待しております。

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