【三橋克仁】「チャンスしかない」大企業には見えないベンチャー企業のキャリア形成

2017.04.24

【三橋克仁】「チャンスしかない」大企業には見えないベンチャー企業のキャリア形成

就活偏差値でいうと”神レベル”と評されるボストンコンサルティンググループ(以下BCG)の内定を蹴って、「教育×IT(=EdTech)」の会社、株式会社マナボを起業した三橋克仁氏。

規格外の行動力と崇高なビジョンを持ち合わせている三橋氏だが、大企業の恵まれた環境に甘んじ、ビジネスマンとしての能力値でスタートアップの人たちよりもかなり遅れを取っている若者に対して警鐘を鳴らす。

今回は三橋氏のこれまでのキャリアパスと、大企業でくすぶっている若者へ届けたいメッセージをじっくり語ってもらった。

前回、【三橋克仁】「大企業相手でも勝てる」BCG内定を蹴って起業したマナボ三橋氏が語るスタートアップの可能性では、株式会社マナボ代表取締役社長三橋氏に自らの起業経験をもとに、スタートアップ企業やベンチャー企業の将来性についてインタビューを行った。

今回はベンチャー企業の社長として、大企業には見えないベンチャー企業におけるキャリア形成について意見を語ってもらった。

大企業の仕事なんて社会全体からするとちっぽけなもの

三橋さんから見て、大企業に勤めている若者が自分のキャリアと向き合ったとき、どのようなことを意識しなければならないとお考えでしょうか?

大企業で自分が担当している仕事というのは、社会全体から見るととてもちっぽけなもの。自分の担当する前後の部署との社内調整などうまくなり、会社の中でしか通用しない文化・常識・単語ばかりが身についていきます。それは社会全体から見ると、「本当にどうでもいいスキル」であるということにできるだけ早く気付いて欲しい。

総合的に見ると、大企業で10年以上働いている30代の人たちの単純なビジネスの総合的な能力値は、叩き上げで動いてきた人達に比べると遥かに低い。取り返しがつかないほど差がついていて、客観的に「怖い」と感じてしまいます。

スタートアップやベンチャーでは、会社に必要なすべての要素をある程度理解し、それぞれの領域の人としっかりコミュニケーションを取れるレベルにならないといけません―目標設定・マネジメントといったことから、財務、法務、経理、総務、営業、開発―全部です。それは必要に迫られて、嫌いでも絶対やらなくてはいけない。

僕は基本エンジニアですので、コードを書いていたいのですが、当然会社をまわすために経理とか法務もやらないといけません。結果、否応にも覚えていき、ビジネスマンとしての総合的な能力は身についていったと思うのですが、そのようなストレスがかかっていない状態の大企業ではぬるま湯になってしまう。給料もかなり良いので、リスクを取って外に出る必要もなく、今の環境が心地よく感じてしまう。特に親も子供も家もあると、動きづらくなってしまいます。

なので、なるべく早い段階で、「自分が憧れる先輩が自分の会社にいるのか」、「その先輩と同い年の、ベンチャーやスタートアップで活躍している人たちを比べたとき、自分はどちらになりたいのか」ということを意識した方がいいと思います。

では、ベンチャーで求められるマインドセットといったものはどのようなものなのでしょうか?

一番大きいのは、自分が裸一貫で何もなくなったときにもう一度ゼロからどこにでもいけるという感覚があるかどうか。自信がある人なら、ベンチャーに転職したものの、そのベンチャーが潰れてしまった場合、いくらでも働ける場所はあります。現に、一度起業したりベンチャーに行ったりした後、失敗してもその後別の領域で活躍している人もたくさんいます。なので、リスクを取れるだけの自信をつけておくことが大事なのだと思います。

おそらく、大企業にいる多くの人がこのことについて分かっているのだと思います。自分は社会全体から見たら大した能力はないのだけれども、「この会社のこの部分」を回すことに関してはベストフィットな状態なので、とりあえずこのまま大企業にいたほうがいいと考えるのかもしれないです。既得権益を守っているようでとても後ろ向きですが。

 しかし、テクノロジーの発展や働き方の改革に伴って、これまで人海戦術に頼っていた大企業の優位性というものも壊れていくように感じられますが、今後のキャリアに関する考え方についてどう変化が訪れると思いますか?

「事業を起こして独立」あるいは、「将来有望なベンチャーに思い切って乗っかること」が今後新しい価値観として定着するのではないでしょうか。

給与所得で500万稼ごうが1,000万稼ごうが、ある程度天井が決まっています。大企業であれベンチャーであれ、同じ能力の人ならば給与所得というのは1.5倍以内に大体収まります。なので、大企業に固執することは、個人レベルで見ても人生スパンでみても大した問題でないように思えます。いくら大企業に勤めているからといっても、社会全体で見たときに、いてもいなくてもどちらでもいいような存在になってしまったら意味がない。

歴史に名前が残ることだったり、社会的にとても意味のあることだったり、少しでも良いから人類が一歩前に進むようなことでないと、個人的には興味はありません。それを成し遂げるというのは、ビジネスインパクトを残すことが手っ取り早いと感じています。なので、本当に社会の役に立つことをしているのかという観点から見ると、スピード感の遅い大企業よりもベンチャー企業で挑戦するほうが理想的なキャリアのように思います。

 大企業に勤めている人がいきなり豊かな生活を手放すのは難しいのではないのでしょうか。若い人材が自分のキャリアと向き合っていく上で特に意識したほうが良いと思われることはありますか?

経済合理性を考えたとき、キャピタルゲイン(※1)とインカムゲイン(※2)を無視しすぎているのが問題だと思います。

※1株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益のこと
※2株式からの配当、債券からの利子や償還差益、証券投資信託からの収益分配金など

株式のキャピタルゲインやインカムゲインが資産家や富豪を生み出すのであって、給与所得でいくら高額を得ようと努力しても、それらから比べると大差ありません。言葉が悪いですが、給与所得をあげようと頑張っている時点で、「常に人に雇われる側である」という“奴隷的思想”になっています。そのような奴隷的思想が、「大企業という力のある雇用主に雇ってもらっている」という安心感を生み、その狭い枠組みの中で優位性があると思いこんでいる。まさに井の中の蛙です。

起業家やスタートアップを起こしている人は株を扱っており、給与所得による年収には意味がないと考えています。会社の価値が少しでも上がれば数億円入るわけですので、そのうちの500万円を自分に当てるのか、1,000万円を自分に当てるのかというのは誤差の範囲。株式をどれだけ発行するのか、3億なのか5億なのかを決めるほうがよっぽど大事なのです。

日本ではこのような話が共有されていない。理解している人が少ない。

例えば転職するとしても、スタートアップの初期のタイミングで転職して、ストックオプション(※3)で仮に株式総数の1%もらえたとしましょう。例えば企業価値が1,000億円になったとき、その株は10億円の価値になるわけです。会社で働いていて、そこの給与を目的にしているのだとしたら、経済的にとても非合理ですしナンセンス。このことが全然周知されていないので、日本における人材の流動性は未だ低いままなのでしょう。

※3会社の役員や従業員が、一定期間内に、あらかじめ決められた価格で、所属する会社から自社株式を購入できる権利

「チャンスしかない」スタートアップ・ベンチャー企業を取り巻く環境

 スタートアップやベンチャー企業を取り巻く環境を教えてください。

実は日本の投資家は近年とても増えています。日本のベンチャーキャピタルの投資額は、昔に比べると少しずつ増えてきており、現在は1,300億円程度と言われています(ベンチャー白書2016より)。

ちなみにアメリカにおけるベンチャーキャピタルの投資額は年間7兆円などと言われていますが、その差以上に日本はスタートアップの数が少ない。つまり、エクイティファイナンス(※4)から資金調達を行って市場に踏み込んでいこうという会社の数が圧倒的に少ないため、必然的に1社あたりに入る金額はとても大きくなってきています。

 ※4企業のエクイティ(株主資本)の増加をもたらす資金調達のこと

5年前では3億円ほど調達すると周りから感心されたのですが、近年好調なスタートアップ企業ではショットで数十億円単位で調達しています。

マザーズに上場して資本市場からファイナンスするよりも、資金が余っている非上場マーケットを選ぶほうが圧倒的に良い。ファンドが新しく立っても、入れる先の会社が少ないため「これはいけるぞ」と思う会社に巨額を入れるしかない。そういうファンド運営者側の心理があって、ワンショットの投資のサイズも大きくなります。

EdTechの領域に関しても「片手で数えられる」程度の数しか競合がいないので、はっきり言ってビビりようがない。「競合がこんなに少ないのになんでみんなやらないの?」といった感覚です。だから今はチャンスしかないので、それに早く気付いて欲しい。

最後に、株式会社マナボがどんな人材が欲しいのか、一言お願いします。

今はスーパーエンジニアが欲しいです。実は教育熱を持っているエンジニアはかなり少ない。中には、ゲーム業界で活躍した経験があり、「これからは社会にもっと価値を提供するような事業をやって、社会にプラスを還元したい」と言ってマナボに参画してくれる人もいます。

FinTechやAdTechと比べてEdTechはテクノロジー的に地味・面白くないと思われがちです。マナボでは指導データを再利用するためにそのデータを解析するなど、いわゆる人工知能的なアプローチや、先生と生徒の相性や志向のデータをもとにマッチングさせて成果を高めるロジックを組むなど、とても面白くやりがいのあることに挑戦しています.

弊社のエンジニアは、日本でも名だたるベンチャーでCTOを務めていた人たちや、トップランカーの人たちを集めているので、そういうレイヤーのスーパーエンジニアを求めています。

また、今は資金を調達したばかりなので、色々攻めることもできるし、色々な変化を見せられるはず。ストックオプションの話をさきほどしたように、これから伸びるはずだというところに早めにジョインすると経済合理性という観点からも利益を享受できます。

編集後記

今回の三橋氏のインタビューを通じて、彼が掲げているビジョンがとても明確であること、そのビジョンを達成するための勝ち筋が見えており自信に満ち溢れていること、そして何より自分がやりたい仕事に全力を注げる楽しさを味わっていることを肌で感じた。

三橋氏が言っていたスタートアップやベンチャーの“スピード感”によって、ますます大企業は市場における優位性を失い、ベンチャーと大企業のパワーバランスは崩れ、逆転していくだろう。

このような中、優秀な人材が大企業の中でくすぶってしまっていては非常にもったいない。力のある人材こそベンチャーに行き、そこでバリューを発揮すれば社会に大きく貢献できるのかもしれない。

この記事が気に入ったら いいね!しよう
Be the change agentから最新の情報をお届けします