2017.04.07

孫正義vs三木谷浩史 男の6番勝負 最強起業家対決 ―中編―

BTCA 編集部

現在創業35年にして時価総額10兆円を視野に猛進するソフトバンクと、創業19年にして時価総額2.5兆円、ソフトバンクを追う規模まで成長をしている楽天。
規模こそソフトバンクが優位だが、これらの2社は同じ情報通信、インターネット業界において直接対決する機会が多いだろう。ソフトバンク創業者孫正義、楽天創業者三木谷浩史―両者ともに現代日本を代表する最強起業家と言っても過言ではない。では、どちらが最強の名を冠するのにふさわしいのか―今回は6つの観点から彼らを比較してみよう。

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【EC比較】楽天市場VSヤフーショッピング ヤフーに勝機は?

<無料化したヤフーが楽天を猛追>

国内ECの代名詞ともいえる楽天市場だが、2014年から2015年末までの2年間、国内流通総額の伸びに陰りが見え始めている。2014年までの2年間では平均16.7%という高い水準で成長が続いていた楽天市場。しかし、15年第1四半期では前年同期比1.2%減の5079億円。第2四半期では同17.2%増の5341億円と持ち直したが、第3四半期では国内EC流通総額に楽天トラベルが加わり、データ集計方法を変えて前年同期比12.6%増の6884億円という数字を公表している。楽天トラベルの国内流通額を差し引くと約5000億円程度であり、ここ2年間は実質ほぼ横ばいであるように考えられる。

この楽天の停滞の背景にはヤフーショッピングの猛進がある。

「今日は革命的な内容をご説明する―」2013年10月、孫正義はヤフーショッピングの出展者向けのイベントで講演し、このように述べた。従来の出店料と売上ロイヤルティを完全に撤廃し、ヤフーショッピングの出店無料化を発表したのだ。楽天市場はこれまで通り出店料や売上手数料から収益を上げているのに対し、ヤフーショッピングは従来のビジネスモデルを根本から変え、広告収入を主軸に据え置いた。

2013年までは、楽天市場の流通総額が年間1兆7000億円であったのに対し、ヤフーショッピングは年間3000億円程度と、規模には圧倒的な差が開いていた。楽天経済圏と呼ばれるような、サービスを使えばポイントが貯まり、そのポイントを利用するために別のサービスを利用すればさらにポイントが貯まる―といった経済の循環を生み出すポイント経済圏のビジネスモデルは「ネットワーク外部性が働く」と言って、参加する消費者が多いほどその優位性が保たれるという性質がある。本来ならば、巨大な経済圏を確立した楽天経済圏を打ち負かすのは非常に困難であるのだが、孫正義率いるヤフーはビジネスモデルを根本から変えることで、楽天を足元から崩しにきたと考えられる。

無料化によってヤフーが受けた代償は大きく、手数料による収入がなくなった一方でプロモーション費が利益率を圧迫し、14年9月中期決算の営業利益は創業以来の減益となった。しかし、その代償のおかげでヤフーショッピングの出店数は爆発的に伸びている。2012年における楽天の出店数は約4万でヤフーショッピングが約2万。そこからヤフーの出店数は2013年に7.5万、2014年に24.3万、2015年に34万といううなぎのぼりを続けている。2015年末の楽天の出店数は約4.4万なので、ヤフーの怒涛の進撃ぶりが伺えるだろう。

そうはいってもやはりまだまだヤフーの売上は楽天には追いついていない。2015年度の年間流通総額は、楽天市場が約2.7兆円(楽天トラベルを含む)、ヤフーショッピングが約4600億円である。1店舗あたりの平均売上を見ると、楽天は約5000万円、ヤフーは130万円と、桁が違うのが現状である。ヤフーはまだまだ発展途上なので、これからの成長は期待されるものの、今の楽天を打破するにはもう一皮むける必要がありそうだ。

<楽天はAmazonにも食われている>

楽天やヤフーは近年、ポイントのキャンペーンを行うことで自社サービスを魅力的にしようとしのぎを削っているようだ。ヤフーショッピングでも楽天市場でも、特に何かしなくても自然とポイントが10倍以上貯まるようなキャンペーンが継続的に行われており、どちらかがセールやポイントキャンペーンを行えばもう片方も追って行うといった状況だ。

一方で、そのようなポイント争いをせずに自社の優位性を保っているのがAmazonだ。2015年度の国内EC年間流通総額を見てみると、楽天が1位で2兆6,748億円(トラベル等含む)、追う2位はAmazonの1兆6,000億円。1兆円近くの差があるものの、決して油断できない状況である。

楽天やヤフーが採っている1企業1ショップを運営する「出店型」に対して、Amazonは1つの商品ジャンル内に商品を集め、各企業がモールへ出品する形式の「出品式」を採用している。Amazonはこれまで紹介した2社のようなセールやポイントを売りにするのではなく、サイト内の検索のユーザビリティ、ニッチなニーズも十分に満たす商品数、送料無料、そして迅速な配達という圧倒的な使いやすさによって支持を集めるようになった。

▼まとめ

ヤフーはこれまでのビジネスモデルを足元から崩すような対策に打って出てきており、今後の猛追に期待が高まる。その結果、現在ヤフーと楽天のポイント合戦のような状況になっているが、Amazonのビジネスが成功していることを鑑みると、今後は「安さ」や「お得感」だけでなく、消費者のユーザビリティを優先したサイトの設計やビジネスモデルを構築する必要があるのだろうと考えられる。

【金融領域】絶好調楽天 VS SBIを失ったソフトバンク

<ネット証券最大手、SBIを失ったソフトバンク>

金融領域については、現在のソフトバンクはあまり成功しているとはいえない。2006年8月に、ソフトバンクはこれまで約27%保有していた投資・金融会社SBIホールディングスの株式を全て売却し、資本関係を解消したことを発表した。この背景には、「ボーダフォン日本法人の巨額買収など、孫が推し進める拡大路線に危うさを感じ、ついていけないと判断した北尾が、ソフトバンクからの完全な決別を図った結果ではないか」と、孫正義と北尾吉孝の不仲説の見方が出ている。

北尾はもともと野村證券の役員を務めていたが、孫からヘッドハンティングされ、実質的な最高財務責任者(CFO)として、ソフトバンクの国内外のIT企業買収などを、資金調達や株価対策面で貢献してきた。その一方で、イー・トレード証券や投資ファンドなど金融・投資事業をSBIグループとして自ら育て上げ、国内最大規模のネット証券会社へと成長させた実力を持つ。

北尾は、ソフトバンクが従来の投資ファンド的な会社からADSL事業などの通信会社に舵を切り、「実業路線」へ転換したことは正しかったと評価したが、一方で、株主の成長期待に依存して投資を拡大する、借金の自転車操業のような経営姿勢は今後マーケットから受け入れられなくなると忠告した。それにもかかわらず、孫はボーダフォン買収を推し進めた。その結果、北尾がソフトバンクを見限ったのではないかと考えられている。

投資資金がかさみ、収益の波が激しいIT企業にとって、安定的な収益を稼げる金融事業はグループの安定経営にとって重要なポジションを担うはずなのだが、ネット証券分野でトップ企業にまで成長したSBIグループと資本関係を解消させ決別してしまったということが、孫の本意であったとは考えにくい。

<楽天は楽天銀行、楽天証券で大当たり>

一方、楽天は金融領域で順調に売上を伸ばしている。1999年以降、株式売買委託手数料が自由化され、IT企業の金融市場の参入が始まったわけだが、その中でもパイオニア的存在であるのが楽天証券だ。楽天は同年6月に日本初のオンライン専業証券としてサービスを開始してから右肩上がりに成長を続け、2016年現在、FinTech部門は売上の35%程を締めるようになった。また、営業利益率の観点から見ると、本業のインターネットサービスが約10%、FinTech部門はその倍、20%以上を叩き出している。

このような好成績を生み出しているのは、本業の楽天市場、楽天カード、楽天証券のシナジー効果だ。楽天カードは年会費無料であるという点と、楽天カードを使って楽天市場で買い物を行えばポイントが貯まりやすいというシンプルな構造によって、会員数を大きく伸ばせたと考えられる。また、費用面についても、1人1万円程かかると言われている加入獲得コストが、楽天市場とのシナジー効果により大幅に削減できていることも大きい。

このような相乗効果は楽天銀行と楽天証券でも見られる。楽天証券では、楽天銀行のポイントプログラム、「ハッピープログラム」を導入し、各種金融サービスの取引内容に応じて、楽天スーパーポイントが付与されるようになっている。そして、その貯まったポイントは楽天市場での買い物に利用できるといった「お得感」が楽天経済圏の発展に大きく貢献してきた。

(※画像引用:日経ビジネスオンライン

▼まとめ

SBIを失ったソフトバンクに対し、楽天銀行や楽天証券などの金融領域で絶好調の楽天。平均営業利益率が20%を超えており、こちらの対決における軍配は楽天にあるといえる。

 

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